【きまぐれ日記】計算ミスの裏側
「計算ミスさえなければ90点越えてました」
「ケアレスミスで5点損しました」
いつの世もミスで溢れている。この業界に携わって十余年経つが、生徒から聞かれる声は毎年同じである。
そんな声を聞いたらすかさず、私は言うのだ。
「ミスはミス。計算ミスをするような計算の仕方が悪い」
と。
何を言わんとしているかおわかりいただけるだろうか。
冒頭のセリフを言うほとんどの生徒が、自分の弱点を分析しているようで実はわかっていない。というのも、冒頭のセリフを言った生徒は、
『本当は実力があるのに、たかが計算ミスごときにやられてしまった』
というのが本音だからだ。
あたかも「計算ミスは失敗に入らない」と言わんばかりの態度である。
実際によく見かける計算ミスを紹介しよう。
こんな連立方程式があったとする。
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2x-3y=18 …①
0.04x+0.1y=1 …②
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冒頭のセリフを言った生徒はどんなミスをしているかおわかりだろうか。
一応、数学の計算には自信があるようなので、②の式の小数を整数にすることはわかっているようだ。しかし、この生徒は面倒くさがり屋さんなので、一気に計算をしようとする。
こんな感じにだ。
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2x-3y=18 …①
4x+10y=1 …②′
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やってしまった瞬間だ。右辺に100をかけ忘れてしまっている。
この問題はたまたま失敗すると答えが分数の怪しい数字になるので、もう一度見直して気付くチャンスがあるからいいが、間違った答えが整数になる場合だってある。そうなると気付かないまま答えを解答用紙に書くことになり、『計算ミス』必至だ。
ではどうすればいいのか。
実はこれは根が深い。
あっさり、
「両辺に100だから、右辺にも掛けないとダメだよね」
と解説して済む問題ではないのだ。
先ほどの一気に100を掛けたところまでさかのぼってみよう。
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2x-3y=18 …①
4x+10y=1 …②′
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残念ながら、この時には既に計算ミスをする準備が整っている。
それは「何も書いていない」ことからわかる。
『両辺に100を掛けるんだ』という意識はあったものの、書くのが面倒なのですべて頭の中でやってしまったために起こったミスである。
これは、単なる計算ミスではない。残念ながら、計算ミスをする準備を自ら整えてしまっているのだ。
ミスが少ない生徒はこんな感じで書いている。
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2x-3y=18 …①
x100 x100 x100
0.04x+0.1y=1 …②
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違いがわかるだろうか。ほんの少しの違いである。
②のそれぞれの多項式の上に小さく「×100」と書くだけである。
こうすることで、右辺の1に100を掛けるのを忘れずに済む。
つまり、ミスが少ない人は単に計算が速いだけでなく(実際に速いが)、ミスをしないシステムを自ら作り出しているのだ。
計算ミスを軽く見ている生徒は、まさに「計算の仕方が悪い」のである。
この考え方が中1から中3まで積み重なると、とてつもなく大きな差となる。
この時期のミスは入試までにまだ間に合う。
ミスをしないシステムを考えることで、『計算ミス』は大幅に減らすことができるのだ。
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